語学のためのカリグラフィー 本と道具編
カリグラフィーの本
The World Encyclopedia of Calligraphy
世界各国の言語のカリグラフィーを紹介した本です。私が学んでいる言語では、ギリシア語書体の章がとても役立ちました。
写真や図解も多くて楽しいし、眺めているだけでも大体の内容は分かりますし、詳しく知りたいところを辞書を使って拾い読みする、という感じでも十分役立ちます。
カリグラフィーで使用する道具の紹介のページには日本の墨汁の写真があり、カリグラフィーのつけペンでよく使用されていることを知り、以来、私も使うようになりました。
こちらも様々な国の言語のカリグラフィーを紹介した本です。私が学んでいる言語では、アラビア語やサンスクリット語のデーヴァナガーリー書体が詳しく、とても参考になりました。
英語で(しかも手書きのカリグラフィーで!)書かれていますが、図解が詳しいので、パラパラと眺めて必要なところを辞書を使って拾い読みする、という感じでも十分役立ちます。
カリグラフィーの道具
LAMY カリグラフィー用万年筆 ☆☆☆
LAMYの万年筆が好きなので、カリグラフィーでも時々使用しています。ペン先は水平カット。しかし一番太くても1.9mmなので、練習用にはちょっと細いかな。軸の断面が三角で持ち方が限定されてしまい、カリグラフィーペンとしてはどうなのかなとも思うのですが、これは好みの問題かもしれません。
パイロット カリグラフィー用万年筆 ☆☆☆
ペン先は水平カット。あまりしならないので書体を選びますが、インクフローは良いです。別売りのコンバーターを使えばボトルインクも使用できます。
コンバーター内には、インクの固着防止に金属のおもりが入っていて、カチャカチャと鳴るのが気になる人もいるかもしれません。私は分解して出してから使っていますが、特に問題は出ていません。
Manuscript カリグラフィー用万年筆 ☆☆☆☆☆
マニュスクリプトのカリグラフィー用万年筆は、右利き用と左利き用があり、ちょっと変わった言語のカリグラフィーをするときにも便利です(例えば、右利きの人がアラビア語を書く時に左利き用を使うと書きやすくなるなど)。
「スクライブ」シリーズ
Scribe Calligraphy Set(並行輸入, 右利き用)
Scribe Calligraphy Set(並行輸入, 左利き用)
写真のペン先は、左下がりの斜めカットのものが左利き用で、水平カットのものが右利き用です。
もしイギリスのアマゾンにアカウントを持っているなら、そこで海外発送する出品者から買うと、割と安く入手できます。
マニュスクリプトのカリグラフィー用万年筆には色んなシリーズがありますが、他のシリーズと比べて、スクライブが良いと思った点は以下の3つです。
1. ペン先がなめらかで書きやすい
ペンの金属板が他のシリーズのものよりやや厚めで、ペン先の角を少し丸めて磨き上げた作りになっています。引っかかりが少ないので、スケッチやイラストにも使えそうです。
2. キャップを被せなくても手に持った時のバランスが良い
カリグラフィーは、軸を様々なポジションで握って書くことが多いのですが、筆記時にキャップを軸の後方にかぶせるタイプのものは、キャップの端が手に当たって気になることがあります。
3. 握る部分があまりゴツゴツしていない
これは好みの問題かもしれませんね。ペン軸の握る部分がデコボコして滑り止めになっているものもありますが、私は凹凸のあるタイプは長時間書いていると手が痛くなるので、ちょっと苦手です。
「クラシック」シリーズ
商品名が、日本語ではカリグラフィーセットとなっていますが、英語ではClassic Calligraphyです。
上記のスクライブは滑らかに書けるようにと、ニブの金属を厚く、角も丸めて作られてため、筆跡のエッジが若干甘く感じる場合がありますが、「クラシック」シリーズはニブの金属が薄く、角を丸めていないので、書き味がつけペンに近く、筆跡もシャープです。若干作りがチープで、書く時にキャップを被せないと軸が短いのですが、ゴツゴツした滑り止めもないし、なかなか使いやすいです(リンクは右利き用です。左利き用もありますが、日本で買えない場合はイギリスのアマゾンなどを利用してみてください)。
こちらはクラシックとは書いてありませんが、中のセットはクラシックのようです(リンクは右利き用です。左利き用もありますが、日本で買えない場合はイギリスのアマゾンなどを利用してみてください)。
コンバーター
インクのコンバーターは、同じメーカーでも他のシリーズ用のものを使用すると、軸の中にひっかかって取れなくなってしまうことがあるので、注意が必要です。
マニュスクリプトのコンバーターには、MC090ST12(ツイスト式)とMC09012(ピストン式)がありますが、ツイスト式をスクライブに使用すると、ひっかかって取れなくなってしまいます。
しかし、ペリカン社が出しているヨーロッパ規格のコンバーターだと、スクライブに使用してもひっかからないので、純正コンバーターの代わりとして使用できます(個体差や仕様変更などがあるかもしれませんので、試される方は、最初はあまり奥まで入れず、少しずつ様子を見ながらやってみてください)。
現時点で、スクライブにはどのパッケージにもコンバーターが付属していないし、公式ページにもどのコンバーターが使用できるかが明記されていませんが、ピストン式がクラシックスシリーズに付属していたので試してみたら、使用が可能でした。
カリグラフィー万年筆用インク
カリグラフィーでは、黒インクは文字の形がよく見えるので、練習用の定番として使われています。
カリグラフィー用インクは万年筆用のものよりも黒味が濃いのですが、マニュスクリプトのカートリッジやボトルインクも、黒味の濃いものが使用されています。
もし純正のインクが手に入らない場合、セーラーの顔料インクで代用できます(長期間使用しない場合はインクを抜いて洗浄しましょう)。
プラチナも顔料インクを出していますが、セーラーのものよりインクフローが良すぎる感じがします。
大きな文字を早く書くとか、個体差でインクの出づらいペンにあたってしまった、という場合に使用すると良いかもしれません。
カリグラフィー用下敷き
カリグラフィーでは幅の広いペンで細かなカーブを書くので、柔らかい下敷きを使用することが多いです。
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専用のものも売られていますが、手芸店でスエード調の合皮を買って、使いやすい大きさに切って使っても良いし、日本の書道用のフェルトの下敷きも、カリグラフィーで使っている方が多いようです。
傾斜台
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傾斜台に用紙を載せて書くと、姿勢が良くなって疲れづらいし、字も上手く書けるので、長時間書く方にはおすすめです。買うと少々高いので、自作する方も多いようです。
左利き用マーカー
先端が斜めになっていて裏表両方書けるので、様々な言語に対応できますが、日本で売っているところが少ないです。
元の値段が£5.99で、1000円もしないものなのですが、日本の通販では、びっくりするくらい高値をつけているところもあるので注意してください。
もしイギリスのアマゾンにアカウントを持っているなら、そこで海外にも発送する出品者から買うと、割と安く入手できます。
Manuscript Calli Creative Markers, Left Hand
カリグラフィー用つけペン
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スピードボールは通常の英文のカリグラフィーでも書きやすいので、きちんと書きたい時にはよく使っています。
通常のものは水平カット(C2, 写真右)ですが、左利き用のものがあり、やや左下がりの斜めカットになっています(C2L, 写真左)。
ただし「つけペン」なので、インクを付けながら書き、使用後は毎回洗うなど、万年筆タイプよりも多少手間がかかります。
写真とリンクは3mm幅のペン先ですが、カリグラフィーの本によればこのサイズが文字の練習に適しているそうで、私もつけペンや万年筆では2〜3mmのペン先を使うことが多いです。
カリグラフィーの道具を使いやすく
合皮の下敷は、丸めて細長い容器に収納すると、じゃまにならず、使いたいときにもサッと取り出せて便利です。
万年筆類は、数本を同時進行で使用する場合、蓋付きの容器に入れておくと、インクの乾燥を防ぐことが出来ます。
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ちょうどいい容器はないかと、いろいろ探して見つけたのが、WECK製の保存瓶。ドイツのメーカーで、色んな種類の瓶を作っていますが、リサイクルガラスの使用など、地球にやさしい取り組みをしています。
同じ形の万年筆を、色別、太さ別で数本使用している場合、キャップにカラーラベルを貼っておくと区別しやすいです。
小物類を載せているスタンドは、実は調味料ラック。実店舗で一目惚れして買ってしまいました。
ボトルインクを最後まで使い切るには
使用しているインクは全部、百均で買った小さな瓶に移し替えて使っています。面倒そうに見えますが、実は小さな瓶の方が、インクを最後まで使い切ることができて便利なのです。
普通のボトルインクを使用する場合、ペン先をボトルの中のインクにどっぷりと浸してからコンバーターを回しますが、広口の小さな瓶なら、コンバーターをはずし、その先をインクに浸けて回すだけでいいので、拭き取るインクも少なく、手間がかかりません。
インクが減ってきても、瓶の下に定規など薄いものを少し差し込んで、底を斜めの状態にすると、ほとんど最後まで使い切ることができます。
市販のボトルインクが濃くて使いづらいと感じる時も、すぐに使い切れるくらいの量を小瓶に移し、水を加えて調整しながら使うということもできます。