語学のためのカリグラフィー サンスクリット語編
サンスクリット語は、数年前にテキストと文法書を買ったものの、その当時は全然刃が立たず、しばらく本棚の飾りとなっていました。しかし去年、文字から取り組んでみたところ、少し前進することができました(実は、あまりにも集中してやったので力尽きてしまい、今はちょっと一休みしています)。
サンスクリット語を学びたいと思ったきっかけは、辞書引いた時、語源の欄に時々印欧語やサンスクリット語起源というものが出てきて、なんだか気になっていたのと、あと、たまにヨガをやるのですが、アーサナ(ポーズ)の名前もサンスクリット語なので、その意味を自分で調べたり書けたりできたらいいな、と思ったからなのです。
サンスクリット語はヒンディー語と同じくデーヴァナガーリー文字で書かれていますが、この文字はアラビア語と同じように、左利きの人の方が書きやすいようです。
この記事では、デーヴァナガーリーのカリグラフィーで実際に試してみた道具を紹介していきます。
サンスクリット語のカリグラフィーで使った道具
マニュスクリプトのカリグラフィー用万年筆 左利き用 ☆☆☆☆☆
Scribe Calligraphy Set(並行輸入, 右利き用)
Scribe Calligraphy Set(並行輸入, 左利き用)
私がデーヴァナガーリー文字のカリグラフィーで、一番使用しているペンです。
写真のペン先は、左下がりの斜めカットのものが左利き用で、水平カットのものが右利き用です。
右利きの方がデーヴァナガーリー文字を書く場合、左利き用のペン先を用いる方が書きやすく、左利きの方は、逆に右利き用のペン先の方が向いているようです。
Click Calligraphy Pen ☆
右利きの人はデーヴァナガーリーを書く時には左利き用のペン先(左下がりのカット)が書きやすいと思っていたのですが、ある日ネットを調べていたら、 右下がりのカットのペン先で書いている人もいるということが分かりました。
Clickというインドの万年筆メーカーが作っているペンなのですが、右下がりカットをデーヴァナガーリー用、左下がりカットを英字用としています。イギリスのアマゾンで売っていて、送料が高かったのですが、気になって仕方がなかったので、注文してしまいました。
商品が届いてから気がついたのですが、デーヴァナガーリー用のカラーバージョン(私が買ったのは白)は右下がりカットで、デーヴァナガーリー用の黒は水平カットでした。
恐らく、右下がりカットは右利きの人用で、水平カットは左利きの人用なのだと思います。
しかしこのペン、ものすご〜く臭いのです。アルデヒド系のツーンとした、身体に悪そうな臭いを強烈に発していてて、数日間陰干ししたのですが一向に収まらず、しばらく物置の中に放置することにしました。
化学や工業製品に詳しい知人に聞いたら、使われているのは安い樹脂で、樹脂自体に臭いがあるため、臭いを完全に取ることは難しいのではと言っていました。
書き味は、いくつか試してみた感じではまあまあ及第点といったところですが、ペン先に入れてある切れ込みが左右対称の位置でなかったりするので、個体差もかなりあるかもしれません。
結論としましては、あまり臭いに敏感でない人には問題はないのですが、日本で売っているところがほとんど無いし、イギリスのアマゾンで買ってもかなり高くつくので(販売しているのがインドの出品者のみで、送料だけでも3000円位かかります)、現時点ではあまりおすすめできません。
あと、このペンにヨーロッパ規格のコンバーターを挿そうとしても、穴が小さくて入りません。
Clickの公式サイトで調べたのですが、専用のコンバーターがみつからないどころか、カリグラフィーペンのリンク先が削除されていました。
カッターかキリで穴を広げようかと思っていたのですが、ネットを調べていたら、どうやらこのペンはeyedroperというタイプのようでした。
コンバーターの代わりに、軸の中にインクを入れてから、ペン先を取り付けるのですが、インクがもれないよう、シリコングリスをネジの部分に塗るといいらしいです。
ブラウゼのゴシック用カリグラフィーペン ☆☆
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ペン先が右下がりのカットなので買ってみたのですが、デーヴァナガーリー書体には向かず、インクがかすれてしまいました。
ゴシック書体は書きやすく、製品としてはとても良いものですが、私のようにデーヴァナガーリー用に買ってしまってはいけません。(^ ^;
カリグラフィー用マーカー ☆☆☆
Manuscript Calli Creative Markers, Left Hand
左下がりカットと右下がりカット、どちらが自分に向いているのかわからない時は、マーカーで試して判断するのも良いかもしれません。
サンスクリット語が載っているカリグラフィーの本
世界のカリグラフィーの本ですが、デーヴァナガーリー文字についても詳しく載っています。
この本でも、デーヴァナガーリーは左利きの人の方が書きやすいとあり、イラストの図解では、左利きの人は、水平カットのペン先で、ペン先を右上に向けてあり、右利きの人はペン先を左下に向けてありました。水平カットのペン先でも書けるけど、左下がりにカットしたペン先の方が書きやすいという説明もありました。
また、右利きの人が水平カットのペンを左上に向けて書く、Compromise Pen Angle(妥協案としてのペンの角度といったところでしょうか?)が紹介されており、線の端の尖った角の向きが、反転した形になっています。
最初にこの妥協アングルについて知った時、なんだか中途半端だなーと思っていたのですが、他のカリグラフィーの本にもこの書き方での作品が現代のカリグラフィーとして掲載されていましたし、YouTubeで検索すると、この書き方で書いている人の動画もいくつか見つかりました。けっこう普及しているスタイルなんですね。
この本にはデーヴァナガーリー用の葦ペンの作り方も載っていて、右利きの人用に左下がりにカットする手順を説明していました。YouTubeでデーヴァナガーリー用葦ペンの作り方の動画がありましたが、こちらも左下がり。伝統的な葦ペンだと、左下がりカットなのでしょうか?
実際に書いてみました
左下がりカットのペン先
右利きだと、左下がりカットのペン先を使用し、ペン先を左下に向けてホールドします。ペンというより、彫刻刀を握るような感じに近いのですが、慣れるとそれほど違和感はないです。私には左下がりカットのペン先が、一番書きやすく感じました。
ちなみに、水平カットのものも同じようなやり方で握って書くことができますが、ペンがもっと垂直に近い角度になり、やや書きづらいです。
上記のLearn World Calligraphyでは、ペン先を60°にカットすると、ペン先を左上に向けて書ける、というようなイラストがあったのですが、ちょっと誇張し過ぎかも。そんなに鋭角のカリグラフィーペンは見たことがないし、上記のYouTubeの葦ペンをつくる動画でも、もっとゆるい角度に削っていました。
水平カットのペン先 + 妥協アングル
水平カットのペンで、ペン先を左上に向け、妥協アングル(Compromise Pen Angle)で書いてみたもの。文字の形が変わってちょっと戸惑いますが、慣れてしまえば楽なのかもしれません。
右下がりカットのペン先
右下がりのペンの代用としてマーカーを使用しています。
ペン先を右上(かなり垂直に近い)に向けて書くのですが、用紙を右上がりに置かないと、書きづらいです。でも、用紙が斜めになっていると、縦線を垂直に引くのが難しく感じます。
また、文字によっては書いている途中にペンの影に隠れてしまって、文字全体のバランスを見て確認することができません。
しかし、これも慣れてしまえば問題ないのかもしれません。YouTubeで検索すると、このアングルで書いている人の動画もけっこう見つかりました。
フォントをカリグラフィーに活用しよう
パソコンで手書き書体に近いフォントで単語や例文を表示すると、カリグラフィーのお手本にもなって便利です。
私はMDエディタで語学ノートを作成しているのですが、問題を解き終わった後に、復習を兼ねてカリグラフィーで書くようにしています。
私が主に使っているフォントはこちらです。
Itranslatorというインドの翻訳ソフトで使用されているフォントです(Windows用みたいですが、Macにもインストールできました)。手書き文字に近くて、美しい書体です。
ノートでよく使用していますが(上の画像)、視認性が良いので、単語カードや変化・活用表にも使っています。
Chandasは南インド、Uttaraは北インドの書体です。
現在のサンスクリット語のテキストは南インド書体で書かれたものが多いですが、Monierなどの昔から定番として使用されている辞書は北インド書体です(上記のフォントSANSKRIT 2003は、南インド書体)。
それぞれの書体の一覧表を作っておくと、必要な時にさっと見ることができて便利です。
カリグラフィーの本や道具の詳細については「語学のためのカリグラフィー 本と道具編」をご覧ください。